米国株式と米国長期債券の最適な組み合わせを検討
世間一般で金融商品投資と言えば株式投資が王道です。次点で為替取引でしょうか。
他にも商品先物、オプション取引など様々な金融派生商品もありますがやはり株式投資が一般的ではないでしょうか。
そしてその株式投資にあたって忘れてならない重要な要素が債券投資です。前の記事ではVTI:バンガード・トータル・ストックETFをTLT:iシェアーズ 米国国債 20年超 ETFでリスクをどれだけ低減できるか検討してみました
超長期に限れば株式投資がもっとも高いリターンを得る事ができるというのは事実ですが一個人投資家が投資している期間はたかがしれています。
その期間に退場せずに投資を続ける事こそが最も重要なわけで今後起りうる株価暴落時に耐えられるかどうかが鍵となります。そこで過去その役割を担ってきた債券についてクローズアップしています
債券そのものもリターンを生みますが、過去債券が重要な役割を担ってきたのは株式と反対の値動きをするという逆相関性であり、株式相場が下落局面を迎えるとリスクマネーはより安全性が高い債券に向かうのが一般的でした。
次に長期金利が上がると新発債券に劣る債券価格は下落するという関係性もある中、近年は株式と債券の逆相関が崩れていると言われていますが少なくとも過去のデータではどうなっていたか見てみます
直近40年(1978~2018年)での最適化
いつもどおりPortfolio Visualizerのツール群を使って検証して行きます
最適化比率の算出
Efficient Frontierを使って当該期間での最適なアセットアロケーションを決定します
全米株式=5:米国長期債券=5。という結果が出ました。より長期のデータでは一般的によく言われる株式=6:債券=4という結果を想像していましたが、株式、長期債券ほぼ同じ比率という結果が出ました
リターンデータとチャート
Backtest Portfolio Asset Class Allocationを使って過去のデータを見ていきます。株式、債券のリバランスは年1回という条件です
40年という長期で見ると株式のが圧倒的にリターンが大きく40年間で80倍にもなるという過去の結果です。
20歳で100万円全米株式に投資しておけば60歳で8,000万円になるという計算です。ただし実際にはインフレもかなり進んでいるので物価調整後で確認する必要がありますが、それを考慮したとしても20倍相当に資産が増えた事になるのです。
これなら長期的には債券不要論が出るのも納得です。ただし株式単独では最大ドローダウンが50%程度になるので資産が半分になる可能性もあるわけですからそれに耐えうるリスク許容度があるなら株式オンリーでいいかもしれません
長期債券をアセットアロケーションに組入れれば最大ドローダウンはー20%強。平均リターンは10%超を維持し40年で約58倍(インフレ調整後約12倍)にになります。
いくら人口増が続き技術革新の中心地である米国と言えども今後も同じ成長を40年続けると考えるのはさすが無理がありますが、少なくとも過去の結果は上記の通りとなりました
ローリング・リターン
いつもワンパターンに過去のチャートと年次リターンばかりを見てきたので今回は別の結果、ローリング・リターンを見てみる事にします。
ローリング・リターン(Rolling Return)とは、基準日から一定期間投資を行った場合のリターンを年率化したものです
3年リターンと、5年リターンを見る事ができます
全米株式クラス
ドットコムバブル崩壊後の2002年に開始した時だけ3年リターンが-14%という結果になり、リーマンショック時の2008年~2010年の3年間の開始でも3年リターンはマイナスとなりますが、残る期間はぼどこで投資開始してもプラスリターンを得られます。
1998年までの前半20年での株式は途中ブラックマンデーなどもありながら、それでも安定的な右肩上がりでしたが、後半20年はドットコムバブル、リーマンショックという2つの大きな暴落イベントもありかなり不安定な時代だったと言えるでしょう
全米株式=5:米国長期債券=5
アセットアロケーションを最適化し債券を5割組入れた場合、1978年以降、どの時点で初めても5年間の平均リターンはプラスという結果です。
3年に限っても2002年開始後の3年平均だけが唯一マイナスリターンですが、それでもわずかー0.5%程度にとどまります。
当然ながら年次のリターンも最大でも20%程度にとどまり、後半20年に限れば10%程度になりますが、5年以上持てばプラスリターンが期待できるいう点では中長期投資に対しては心強いデータと言えそうです
直近20年(1998~2018年)での最適化
最適化比率の算出
全米株式=4:米国長期債券=6。という結果が出ました。
20年の中にドットコムショックとリーマンショックという2度の歴史的暴落の影響か長期債券を多く組入れる方がシャープレシオが最適とう結果になりました
データとチャート
直近20年のうち前半10年間の間に先ほども述べたドットコムショックおよびリーマンショックの影響を受け株式にとっては非常に厳しい言える時代において、6割長期債券とする事で比較的、安定的にリターンを得ることが出来ます。
特にリーマンショックの株式の大暴落時でも長期債券が上昇する事で資産の目減りは20%程度に抑える事ができ最終的に20年間でも株式を上回る結果となりました
ローリング・リターン
40年と同様にローリング・リターンも見てみます
株式クラスのみ期間リターンは当然ながら40年間の後半20年を切り出しただけの結果です。
全米株式=4:米国長期債券=6
株式:債券比率が変わり開始年が異なっても3年間、5年間リターンとも全期間プラスリターンを得ることが出来るという結果を得られました。
最大ドローダウン約ー21%でこの結果で年次リターン7.7%という結果を得られた事になります。株式クラスのみが最大ドローダウンー50.9%、年次リターン7.4%に対してのこの成績は頼もしいですね。
米国株式と米国債券の最適化検討まとめ
- 長期40年間では株式のみのリターンが優れる
- 長期債券5割では40年間で5年平均リターンは常にプラス
- 20年間ではドットコム、リーマンの2大ショックの影響もあり長期債券6割が優れる
- 適切な長期債券組入れにより20年間で5年平均リターンは常にプラス
伝統的な手法である株式と長期債券の組み合わせによる40年と20年でそれぞれみてみました。過去の特定期間の切り取り方については注意が必要ですが、ともにどの時期の5年平均リターンもプラスというのは債券を検討するにあたり重要な結果といえます。
この過去のデータの結果が、将来の期待リターンというわけではないのは承知していますが今後のアセットアロケーション決定の一助としたいと思っています
この20年間では歴史的な暴落が2度もあり、古きよき時代の株価右肩上がりに対してFinTecなど情報技術の影響も受ける近年の相場ではどんな暴落が起りうるか分からない不穏な状況の中、特に各指標上は割高な状況とも言われる米国市場であればなおさら下落時にどのように対応するかを検討しておく必要があると思っています。
最大の課題は債券の逆相関性の再現性です。2019年まで予想される利上げと長期金利上昇の状況も見極めつつ最適な債券または現金比率を検討しておきたいです。
今回はあくまでも米国株のみでの例によって過去データを確認したに過ぎないわけですし毎回言っていますが為替という問題も常に影響してきます。
私個人は米国株偏重からもう少し分散したいと考えていますので他の先進国株式と先進国債券、新興国株式と新興国債券などの比較もしてみようと考えています。
最終的にはPER、CAPEなどの指標との相関なども取れたら面白いなと思っています
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株式と債券をあわせたバランスファンドに関する記事です