VTI:バンガード・トータル・ストックETFのリスク低減検討
米国債券ETF活用によるリスク低減を検討する記事です
世界経済の中心である全米株式に投資できるVTI:バンガード・トータル・ストックETF
過去、低迷期もありましたが超長期にわたり右肩上がりで順調に成長してきた米国市場にこの一本でほぼまとめて投資できるETFです
一方、短中期的に見ると、米国市場は特に好調だった2017年の株価上昇もあり、各種指標などから割高感が指摘されている状況です。
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また長期金利上昇といった状況から、常にある程度は景気後退に備えた動きを考えておく必要があります。
超長期では世界経済全体の伸びや米国自体も人口増加国であり、優良グローバル企業を多く抱える米国の優位性は今のところ疑いませんが短中期的には必ず景気後退局面が訪れ一定水準までは株式は売り込まれる時が来ると思っています。
リーマンショックのような危機は無いまでも、20~30%程度の下落は十分予想され、その時が来た時にしっかりと本命の金融商品をホールドできるかどうか握力が試されます。
一応自分はリーマンショックの暴落を、リスク資産額が少なかったとはいえ投資信託を一部ホールド(放置)して耐えた経験はあります
ただし当時と違いリスク資産も大きくなり、また家族を抱える身になった事でリスク許容度はあまり高くない状況です
その状況で暴落を安穏とやり過ごす自信はそれほどありません
暴落とまではいかないまでも特にここ2~3年のような極端な右肩上がりはそうそう続かないと思いますので下落時に備えて手持ちの株式ETFのリスクを抑える方法を検討してみます。
検討し得る案はいろいろあると思いますが、代表的なところでは例えば以下の3つでしょうか
- キャッシュ比率を上げる
- ディフェンシブ株
- 債券
1.キャッシュ比率
現金化してしまえば本当に株価が下落したときには最も有効です。
安くなったところで割安な株を買い集めておけば次の景気拡大時にしっかりリターンを得ることができるでしょう。
ただ下落前に現金化~再購入などタイミング投資はそうそううまくいきません。また私の場合、今の時点でキャッシュ比率が相当高いので今回の検討からは除外します
2.ディフェンシブ株
以前のAmazonald投資記事でも触れたMcd:Macdonaldなど適切な銘柄やETFを選択すれば一定の効果はあると思います。
特にリーマンショックを耐え増配し続けた企業の株を持っていれば安心できるかもしれません。高配当が下落時においては心理的な下支えにもなります。
私は今のところ個別の高配当株やディフェンシブ株を所有していないので場合によっては検討の価値はあるかもしれません
3.債券
今回のテーマです。基本的に債券は株価と逆の動きをします。
この逆相関性によって株式と債券を適切に組み合わせる手法は古くからのリスク低減の王道のひとつといえます。
但し、金利が上昇すれば債券価格も下落するため、常に有効かというとそうもなさそうです。
また外国債券に関しては円貨を基軸とする日本人が投資するにあたっては為替変動の影響も受ける為、そう単純な話でもありません。
ひとまず過去のデータのみから債券によるリスク低減について検討してみます
逆相関値、シャープレシオ最適化、過去の株価データを使って債券ETFを活用することによるリスク低減について検討していきます。
ツールは定番のPortfolio Visualizerの各種ツール群を使用します
米国中長期国債ETFの中からVTI:バンガード・トータル・ストックETFと最も逆相関性の高いETFを選択します。経費率の安いバンガード社のETFから選択する場合はVGIT:バンガード・米国中期国債ETFになります
VGIT:バンガード・米国中期国債ETFの場合
VGIT:バンガード・米国中期国債ETF概要
経費率:0.07%
構成債券は以下の表のとおりです。ほぼ3~5年、5~10年の米国債券で構成されています
出典:バンガード社HPより
VTI=30:VGIT(米国中期国債)=70の場合
シャープレシオの最も高くなる比率を取得します
およそVTI=3:VGIT:7で最もシャープレシオが高くなります。
標準偏差3.37でリターン5.53を得られる計算になります。当然ですが債券ETFの割合が多いためちょっと地味な結果になります
過去のチャートです
Portfolio1:VTI
Protfolio2:VGIT
Portfolio3:VTI=3:VGIT=7
比較的きれいな相関チャートを描いています。
VGIT:バンガード・米国中期国債ETFの設定が2011年の為、期間が短いですがそれでも価格の変動を抑えている事は見て取れます。
これだけ米国市場が好調な期間でもVTI:バンガード・トータル・ストックETFの最大ドローダウンは-17%以上ありますが、それに対して債券を加えたポートフォリオでは最大ドローダウンを-6%以内に抑えられるいるのは秀逸です。
株価がどうしても気になる場合は最適かもしれません
TLT:iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF
次はより長期の国債ETFで確認します。
経費率で勝るバンガード社のVGLT:バンガード・米国長期国債ETFでデータを確認したいところですが、長期間のデータを確認できて同じ商品体系のかつ逆相関値も同じブラックロック社のTLT:iシェアーズ 米国国債 20年超 ETFでも確認してみます
VTI=56:TLT(米国国債 20年超)=44の場合
TLTの債券比率です。ほぼ20年超の米国債券で占められます
出典:ブラックロック社HPより
先ほどと同様にシャープレシオが最大になる構成比率を割り出し過去のチャートを見てみます
過去15年では、VTI=56:TLT:44でシャープレシオが最大となります。
株式:債券比率でよくみる6:4に近い比率ですね。この比率での過去のチャートを確認します
2003~2018年の15年チャート
Portfolio1:VTI
Protfolio2:TLT
Portfolio3:VTI=56:TLT=44
VTIの最大ドローダウンが-50%あるのに対して、TLT:長期債券ETFを加えたポートフォリオでは-20%程度にとどまっています。
また年単位のワーストリターンが-5.3%とかなり下落を抑えられています。
特に2008年のリーマンショック時のTLTの働きが見事です
結果、長期債券ETFをポートフォリオに組入れる事でリーマンショックの時ですらこの程度のダメージで済むとなるとやはり債券の効果は絶大です。
今がリセッションによる株価下落前だと仮定してリーマンショック直前の2008年からのチャートを見てみます
2008年~2018年の10年チャート
緑はS&P500です
リーマンショック時の長期債券の動きによって債券を加えたポートフォリオでは下落を抑えつつ以降もVTIおよびS&P500をアウトパフォームしています。
VTIなどが追いついたのは2018年2月でしたが、ちょうど米国株式が大幅に下落した為、再び上回っています。
ただし当然ながらリーマンショック当時と現在では金利他同じ状況ではないので次の景気後退による株式相場下落時に同じ効果を生むかはわかりません。
しかしながら10年~15年単位程度で見れば1回程度は景気低迷時がありうるわけですから、その時に適切な債券ETFを構成する事によって下落を抑えたままある程度のリターンを得られる可能性はありそうです
VTIの米国長期国債ETFによるリスク低減検討まとめ
- 過去15年では長期債券ETF4割構成でのドローダウンを50%→20%に改善できる
- 債券を加える事により年間リターンは1%ほど減少
- TLT単独では15年間の年間リターンは約6%。分配金は約2.5%
- 10年でみた場合はシャープレシオ向上させながらリターンも微増
特定の10年という条件ではありますが、シャープレシオを3割改善しながらリターンは落ちないという結果を得る事ができたわけですから、これは購入検討の一考の価値ありです。
記事冒頭でもふれたように為替の問題もありますが長期に渡ってドル建ててずっと運用する予定ならば外国債券もリスク低減には一定の効果はあると考えます。
ただし株価と債券の逆相関関係が近年崩れつつあるという記事も見ましたし過去15年そうだったから今後も同じ方向性が続くという保証はありませんので木だけを見すぎず森も見ながら行く必要があります
現在、BND、BLV:バンガード・米国長期債券ETFで15%ほど構成している米国ETFポートフォリオの債券ETFですがBNDは総合債券、BLVは長期国債、社債混在です。
今考えるとシンプルな債券ETFを組み合わせた方がよかったかなと思い始めていますが、とりあえずBLVでも同様の検証をしてみてからTLTの追加購入なども検討してみることにします 。
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